HEARTBEAT CITYハートビート・シティ―1984年
- Hello Again
- Looking For Love
- Magic
- Drive
- Stranger Eyes
- You Might Think
- It's Not The Night
- Why Can't I Have You
- I Refuse
- Heartbeat City
- 【プロデューサー】
- ロバート・ジョン・"マット"・ランジ&ザ・カーズ(Robert John"Matt"Lange&The Cars)
- 【レーベル】
- エレクトラ (Elektra/Asylum Records)
- 【レコーディング】
- バッテリースタジオ(ロンドン)(Battery Studios, London)
"マット"・ランジとのタッグ
5作目の、カーズを大物バンドにのし上げた大大ヒットアルバム。80年代からのミュージックシーンと共に 前作から変化してきたカーズのサウンドがより進化し、当時の空気にがっちりハマったポップなアルバム。 (とはいえ管理人は後追いのため当時の「生の空気感」を知らないのが残念)
これまで1作目からタッグを組んできたロイ・トーマス・ベイカーではなく、ロバート・ジョン・"マット"・ランジを迎え、 バンドとマットの共同プロデュースとしてクレジット。
マットはこれ以前だとAC/DC、以降だとデフ・レパード、ブライアン・アダムス、後の奥さんシャナイア・トゥウェインなどの プロデュースで有名です。時間を掛けてオーヴァーダヴィングをし、1ミリのズレも許さない緻密な音作りをするタイプですが、 このハートビート・シティでもまさにその仕事をしてのけました。
何でもアルバムの完成までに8ヶ月かかったらしいですよ。ただ彼をデフ・レパードの"Hysteria"で知った管理人は、 8ヶ月なら短いんじゃ…とか感じてしまうのですが。
緻密なスタジオワーク
曲を聴くと、確かに全ての音がそれは細かく制御されています。キーボードのみならず、エリオットのギターも、 デイヴィッドのドラム一音一音も。無論コーラスとそのバランスも。
リックが書く曲と、メンバーたちのアレンジが元々優れているからこそのヒットではありますが、 ここまで軽快に聴きやすい曲にするためには、ライブとはまた違う、スタジオで切って貼って作り上げられた「作品」としての 技量の面が大きいのだな…と、普段「プロデューサー」の存在にあまり目の向かない管理人は、今更ですが気づかされるのでした。
このアルバムツアーの様子はビデオ(LDも…)で販売されました。ステージ上で再現できる限りの緻密さと、 ライブバンドである彼らのハードな演奏力が合体したライブ。 MCなしで淡々と進む雰囲気がまた良いのです。
ライブビデオはDVD化されておらず廃盤状態。もったいないです。動画がアップされていますので宜しければどうぞ。
> THE CARS LIVE 1984-1985 (VHS, LD) 紹介ページへ
ミュージックビデオ!
更にヒットの追い風になったのは、間違いなくミュージックビデオの存在です。
アルバム収録10曲中、6曲もビデオがあるってだけで「売れ続けたのねー」と改めて驚きますが、特に"You Might Think" "Drive" "Magic" 辺りのビデオは、きっと当時MTVで掛かりまくったのではないでしょうか。
だって今や世界の花形賞レース、ガガやビヨンセが争うMTV VIDEO MUSIC AWARDS(VMA)の初代Video of the Year (最優秀ビデオ)は、 カーズの"You Might Think" なんですから。同年ノミネートのマイケルのスリラーをも押しのけて、 ストーカーハエ男と石けんの上で演奏する30歳台の男たちが勝つんですから…(笑)。いい時代です。
初期の雰囲気は… でも好きなアルバム
アルバムもシングルも売れに売れて、ツアーも成功。いいことづくめなこのアルバム。
ただ前作からそうですが、ポップさが強まるが故に、アルバムの中でキーボードが占める印象と仕事量は格段に増え、 ドラムは打ち込みが多くなり、ユニークなベースリフやエリオットの強いギターの印象は減り、曲の中に潜む 私が好きだった あの飄々とした感じは、うーん…若干減ったかな、という気もします。
カーズといえばキーボード。それが4作目以降の世間のカーズのイメージ… 否定的な意見も書きつつ、 しかし私がカーズを好きになるキッカケになった、大好きな曲が沢山詰まったアルバムです。
ま、結局好きなんですよね。
それにカーズの曲におけるキーボードの存在は、何となく和音出してるキーボードとはワケが違うので、 聴いていて飽きないし、アルバム通して聴いても「どの曲も一緒じゃない?」感を持たせないと思います。 各メンバーと、今回のプロデューサー マットのアレンジ力の高さと、各曲のイントロのキャッチーさがそうさせるとも思うんですけれど。
アルバムジャケット
恒例のアルバムジャケットについても触れます。デイヴィッドは今回イギリス人アーティスト、ピーター・フィリップス(Peter Phillips) のポップアートを選びました。彼の1972年の作品Art-O-Matic Loop di Loop です。
上手いことアルバムの雰囲気に合うのを選んだなぁ、と感心します。
カラフルさ、CANDY-O のヴァルガスとはまた違うピンナップガールのポップな雰囲気、 Phillips がよく使うレンジの広いクルマや部品のモチーフetc、アルバムの中身と合って大変ポップな、でも少しレトロなアート感もして、 かといってお高くとまりすぎず。
これまでアルバムごとにジャケットでの「バンド名とアルバムタイトル」の字体を変えてきていますが、 よく見るとアルバム単位ではバンド名とタイトル名は ほぼ同じ字体。しかし今回はそれぞれの 字体を変えているんですよね。細い手書き風の字体は、たぶんタイトル曲 "Heartbeat City" のイメージに合わせたのかなと 勝手に想像してますが、そういうこだわりも見え隠れする、外見も中身も大変統一されたアルバムだと思います。褒めすぎでしょうか…(笑)。