The Modern Lovers's History~バンドの歴史~
画像引用元: Last.fm
メンバー紹介
1969年、マサチューセッツからニューヨークへ渡った10代のジョナサン・リッチマンは、9ヶ月ほどをヴェルヴェット・アンダーグラウンド のマネージャーの元に居候して過ごします。1970年ニューヨークからボストンへ戻ると、ジョナサンはすぐにバンドを結成。結成メンバーは
- ジョナサン・リッチマン Jonathan Richman(vo,g)
- ジョン・フェリス John Felice(g)
- デイヴィッド・ロビンソン David Robinson(dr)
- ロルフィー・アンダーソン Rolfe Anderson(b)
パンク・ロックバンド、The Modern Loversの誕生です。
ギターのジョン・フェリスはジョナサンの幼馴染でバンド加入当時はまだ15歳。 ドラムのデイヴィッドは、海外のファンページによると、働いていた レコード店にジョナサンがドラムとベースの募集広告を貼りに来た時に、 自分が入ることを決めたとか[1]。 しばらくして1971年、ジョンとベースのロルフィーがバンドを抜け、春頃新たに加入したのがこのふたり。
- アーニー・ブルックス Ernie Brooks(b)
- ジェリー・ハリソン Jerry Harrison(key)
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脱線しますが、当時ハーバード大生だったこのふたりは、同じくボストンで音楽活動をしていたアンディ・ペイリー Andy Paleyと一緒に 住んでいたこともあったらしい。アンディとジョナサンも親友同士。アンディ・ペイリーはビーチボーイズのブライアン・ウィルソンの ソロアルバム等のプロデューサーとしても有名ですが、70年代はボストンでバンドThe Sidewinders(Piper前にビリー・スクワイアも在籍した)を やったり、弟とThe Paley Brothersで活動したり。ボストン・ミュージック・シーンの人脈の歴史がもう始まりまくっていますね。
アーニーとジェリーが入ってからの4人体制が、いわゆる「初期The Modern Lovers」と呼ばれる黄金メンバーです。 ただ、ジョン・フェリスが高校卒業後に一時期バンドに戻り5人体制だった頃もあります。 バンドは73年あたりからジョナサンの方向転換で崩壊し始め、74年2月頃に解散します。
メンバーのその後
バンドの優れた音楽性と同じく特筆すべきは、解散後のメンバーたちの活動です。
- ジョン・フェリスはボストンでリアル・キッズ The Real Kidsを結成。
- デイヴィッド・ロビンソンは数年後の1976年にザ・カーズ The Carsに加入。
- ジェリー・ハリソンは1977年にトーキング・ヘッズ Talking Headsに加入。
- アーニー・ブルックスはエリオット・マーフィー・バンド他、多くのミュージシャンと共演する名うてのベース・プレイヤーに。
- ジョナサンは1976年から今に至るまで、マイペースにソロ活動を。
皆ボストン・ニューヨークシーンを代表するミュージシャンになっています。そんな彼らが若かりし頃一緒にプレイしたというだけでも、 こちらをワクワクさせます。彼らのアルバムがリリースされた時にはとっくに解散しているという状況も、The Modern Lovers を 「伝説」的存在にしているのかも知れません。
The Modern Loversの活動とレコーディング
バンドは地元ボストンやニューヨークでライブを重ね、人気も上昇。 そこにワーナーやA&Mといったレコード会社が興味を持ちバンドに接近してきます。 バンドは活動中に約6回のレコーディングを行っています。
- 1971年秋か冬頃 ボストンにて まずバンドにコンタクトを取ったのはワーナー・ブラザーズです。 ワーナーの元、バンドとしては初めてのレコーディングセッションを行います。 使用したスタジオはインターメディア・スタジオ。 後にカーズが購入して「シンクロ・サウンド」に作り変えたスタジオです。
- 1972年3月か4月頃 ロスにて ふたつのレコーディングのため、バンドはロスへ飛びます。ひとつはワーナーによるもの。 プロデューサーはジョナサンが敬愛していたヴェルヴェット・アンダーグラウンドの元メンバー、 ジョン・ケイル。
- 1972年4月頃 ロスにて レコード会社、A&Mもバンドに興味を示し接近。ロスでのふたつめのレコーディングはA&Mのためのもの。 プロデューサーはAlan MasonとRobert Appere
- 1972年6月 ボストンにて
どちらのレコード会社と契約するかは決めないまま、バンドはボストンに戻ります。
そこへバンドに目をつけたキム・フォーリーがやって来て、レコーディングセッションを持ちます。
この時の主な音源はのち1981年にThe Original Modern Lovers としてリリースされますが、 それに寄稿されたジョナサン本人のライナーノーツによると、「キム・フォーリーは突然電話を掛けてきて、45分しゃべって、 僕たちに会いにボストンまで飛んできて、デイヴィッド(ロビンソン)の両親の家に1ヶ月も居座った」らしいです。 そのあとジョナサンが「デイヴィッドの両親は絶対1年くらいに感じたはずだよ」と書いてるのが 爆笑です[2]。
この後 ジョナサンに変化が…
1972年の大晦日にはニューヨークのMercer Arts Centreでニューヨーク・ドールズらとライブ。 1973年の初め、バンドはついにワーナーと契約を交わします。
ワーナーとの新たなレコーディングも予定される中、バンドは仕事でバミューダに短期滞在。 そこでジョナサンに天啓が!今現在のジョナサンに通ずる、新たな音楽性に目覚めます。 その結果ジョナサンはこれまでのバンドの曲を次第にやりたがらなくなり、バンドにも影響を及ぼします。
ちなみにジョナサンが経験したバミューダでの変化は、のちに本人が "Monologue About Bermuda" という歌で披露しています。 (クリックすると音源へジャンプします) 是非聴いてください。もう漫談の域です、このジョナサン空間。歌自体は短いんですけどね(笑)。
世界一屈託のない人って、ジョナサン・リッチマンなのではないでしょうか。
- 1973年9月 ロスにて バンドは再びロスへ。ワーナーの元、プロデューサーに再びジョン・ケイルを迎えレコーディングにのぞみます。 しかしジョナサンはこれまでの曲を演奏することを拒否。結局使えるものを何も録れないままレコーディングは終了。
- 1973年10月頃 ロスにて おいおい困るぞ、となったワーナーはキム・フォーリーをプロデューサーとしてバンドの元に送り込みます。 ゴールドスター・スタジオで改めてレコーディングが行われ、こちらはうまくコトが進んだようです。 しかしすでにバンドは崩壊状態に。
初期Modern Loversの解散
レコーディングは何度もしたもののリリースには至らず。バンドも崩壊状態。とうとうワーナーもバンドから手を引きます。 1973年秋、デイヴィッドが脱退。新たなドラマーを迎えるものの、1974年2月頃にバンドは解散します。
メンバーはそれぞれの活動へ。ジョナサンはソロとして活動を模索。
過去音源のリリースと新生Modern Lovers
1975年転機が訪れます。ロスに移って活動していたジョナサンが、この頃ビザークレー・レコードと契約。 ビザークレーを創設したマシュー・"キング"・カウフマンが以前A&MでModern Loversのレコーディングに 関わっていた事も幸いし、彼は1971、72年のワーナーとA&Mのお蔵入りデモを集めます。
こうして1976年8月、それらはアルバムTHE MODERN LOVERS としてビザークレーからリリース。 初期のモダーン・ラヴァーズが、活動も終えた数年後ようやく世に出たのでした。
1976年といえばパンク・ロック全盛のころ。ニューヨークではラモーンズやパティ・スミスが活躍し、 ロンドンではザ・クラッシュや"Roadrunner"をカバーしたセックス・ピストルズが活動を開始。 The Modern Loversは早すぎた伝説的パンク・ロックバンドとして、アルバムは高い評価を獲得。 今現在も支持され続けています。
同じ1976年初め、ジョナサンは新しいモダーン・ラヴァーズを結成。 Jonathan Richman&the Modern Lovers と名付けた、 ジョナサン自身が「これが自分のデビュー」と位置づけるアルバムを1976年5月にリリースします。
同じ年にリリースされた、ふたつのthe Modern Lovers… 同じ名でも大きく変化した音楽性… 昔のジョナサンと、現在に通ずるジョナサンです。
ここで触れねばならぬのは、1976年初めにデイヴィッドがバンドに出戻りし、この新生モダーン・ラヴァーズのアルバムで ドラムを叩いていること。
でもすぐ脱退します。そりゃそうです。ジョナサンがやりたいテイストが以前と違いすぎます。 ジョナサンはドラムの数を減らせー、音を小さくしろーと主張したらしい。しょうがないです(笑)。 同年夏前にはデイヴィッドはもう別の地元ボストンのガレージロックバンドDMZ でプレイし、 その頃リック・オケイセックに誘われ The Cars が誕生します。
画像引用元:Last.fm
その後のジョナサン・リッチマンは、ジョナサンらしさ満開で多くの作品をリリース。 映画「メリーに首ったけ」での仕事なども有名だし、2007年にはフジ・ロックにも来てくれました。 1998年のアルバムI'm So Confused はリック・オケイセックがプロデュース。
ボストンのミュージック・シーンってのは、知れば知るほど、昔も今もローカルミュージシャンから大物まで 人脈のつながりが深くて温かいな、と感心します。殺伐としていなさそう、とでも言いますか。
■脚注■
- ▲ about David :Fine Line - David Robinson Fan Site
- ▲ sleevenotes to "The Original Modern Lovers" :modernlovers.com home page
■参考資料■
【The Modern Loversに関して】
- The Modern Lovers :Wikipedia
- The Modern Lovers (album) :Wikipedia
- The Modern Lovers :allmusic:
- The Modern Lovers (album) :allmusic
- The Original Modern Lovers :allmusic
- Live at the Longbranch and more :allmusic
- Jonathan Richman&the Modern Lovers :allmusic
- modernlovers.com home page
- from the liner notes of The Modern Lovers by Gary Stewart
- HUMAN BEING LAWNMOWERななめ読み:THE SIDEWINDERSとあれこれ :LAZY SMOKEY DAMN!